ワールドフェアトレードデイ 2020 オンラインに参加して 202059日(土)

 

 

 

 5月の第2土曜日は「world fairtrade day」ということで今年も全国各地でフェアトレードを盛り上げようとするイベントが開催予定だったところ、コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされました。

 

 

 

 それに代わり、主に「フェアトレードタウン」(今現在日本国内で6タウン:熊本・名古屋・逗子・浜松・札幌・いなべ)の活動報告や全国のフェアトレード関係者の交流がメインとなりました。

 

 

 

 「南」の貧しい生産者のために「北」の消費者ができること、として語られることの多いフェアトレード(公正な取引)。それは過剰な資本主義によって拡大されていく格差に対して、市場への参加を推進しつつも、市場へ一定程度の介入も認めること(=生産者にとっての公正を目指して)でもあり、そもそも市民であり消費者でもある私たちの責任の一端として(エシカル消費)、販売者の責任の一端として(CSRの一部)も語られます。

 

 一方で格差社会が進行しているのは南北関係のない話であることから、「公正」を謳うがゆえに、比較的割高にうつるフェアトレード商品は一定の消費者にとって「フェア」でないとも見え、サプライチェーン全体、ステークフォルダーすべてへの「フェア」の実現を目指すことをモットーとするフェアトレード団体は多いです。

 

 

 

 今回の新型コロナウイルスから考えられることは多いですが、そんなフェアトレードを足掛かりにしたとき、一体どのようなことが考えられるでしょうか、2020年のワールドフェアトレードデイで出た話題を整理しつつ、考えていきたいです。

 

 

 

 ・「エシカル」な企業

 

アパレルブランド、コロナ世界的流行の中 アジアの労働者を見捨てるhttps://www.hrw.org/ja/news/2020/04/01/340282

 

 販売が滞り、経営困難に陥った結果として従業員を大量に解雇した企業や生産者への賃金を支払わない企業の中には「エシカル」を押し出していた企業もあります。一方で、フェアトレードの制度でも含まれていますが、生産者に対して前払いを行っているところや、生産者との交渉を行っているところもあり、名前だけの「エシカル」ではなかったかを問われています。中には今回のコロナによる経営困難を名目に、都合の良いように人件費などを削っているのではないかと疑われている企業や、生活困窮者をターゲットにした貧困ビジネスをしているように見える企業もあります。

 

 ただ、現実にはすべてのステークホルダーに対して補償できるような状況ではそもそもない企業も多く、その中には常日頃から自分たちの生活と生産者や地球環境への配慮のバランスを大切にしようとぎりぎりを攻めてきたがゆえに、苦渋の決断を迫られているケースもあります。こうした事例をみていると、

 

 やはり雇用主―被雇用者(従属者)の関係であるという現実の中で、「対等な関係」とはどんなありかたか

 

 企業がどこまで責任をとるべきなのか

 

 消費者として何かできることはないか

 

そんなことを考えさせられ、一体どの企業が本当に「エシカル」なのかその判断は容易ではありません。まして、ネット通販への移行なんかもある中でどこもかしこも上手にHPを飾り立て、似たような文言を並び立てるのでますます困難であるように思います。

 

 主に出店して利益を出していたようなフェアトレード団体にとっても現状は過酷であり、中にはインターネット販売を新たに始めたところもありますが、「フェアトレード」にこだわっていたからこそのジレンマも感じているようです。

 

 フェアトレード商品が「フェア」足る理由は、販売する方々によって様々です。

 

これに対して、消費者の方々は

 

「いったい何パーセントがその零細な生産者の利益になるのか」

 

「そんな一部の生産者たちだけとの取引なのにグローバルイシューの視点からなんて大きなこと言えるのか」

 

「本当に生産者たちは困っているのか」

 

「どうして楽しい買い物にも責任を感じる必要があるのか」

 

「あんまり考えずに買い物するのは悪いことか」

 

「どれだけストーリーがよかろうが、この手に来るまでに環境への配慮はされているか」

 

「海外の生産者に配慮するより先に国内のことではないか」などなど

 

 

 

いろんな観点から「フェア」への問いが生まれます。

 

これらの問いにまた販売者らは自らの考え(生産者の考えもくみ取った)を述べ、消費者とのキャッチボールをする、その対話の中にこそフェアトレード商品を販売する醍醐味があるように感じます。

 

 そのためキャッチボールではなく、いかにお客さんに製品を見た目で選んでもらうかで勝負をするオンラインショップがなんとなく合わないというのも分かります。

 

 

 

また、日本国内で増加傾向にある「フェアトレードタウン」を柱にした

 

フェアトレード活動は、「南」の生産者と「北」の消費者のグローバルな取引にのみ焦点があたっていたのが、町ぐるみの活動へとなることで「ローカル」な視点をも生み出している。

 

フェアトレードタウンでも「エシカル」という文脈で「フェアトレード」の精神を引き継いだ「地産地消」や被災地などの生産者を応援する目的での「応援」製品も数多い。

 

 

 

こういった「タウン」活動は町ぐるみでの「フェアトレード」運動を盛り上げる推進力となっていますが、上記のようないきさつから「片足にビジネス、もう片足に国際協力」としてのフェアトレードの領域を拡大する要因にもなっています。

 

 そのことによるフェアトレード活動の「タコつぼ化」は懸念されていますが

 

フェアトレードラベル認証制度に重きをおいてきた欧米型のフェアトレード運動よりも柔軟性があり、「フェア」という硬直化しえない概念を扱うにはふさわしいのかもしれません。

同時に、タウンの中でもグローバルな取引をしつつ、地元でフェアトレード商品を通じてビジネス展開することは

グローバルな恩恵を享受しつつ、地域活性化にも貢献できる「グローカル」な視点にたっているとも言えるのかもしれません。

 

 

 

 タウンの盛り上がりもある中で、毎年のような対面形式のフェアトレードイベントが恋しいものの、今回のオンライン交流会で顔を合わせた全国のフェアトレード関係者らがそれぞれの多様性をうまく尊重しつつ、協力できていければ来年以降のフェアトレードはもっとよくなるかもしれない、そんな期待もしました。